志布志モデル視察レポート
鹿児島県の志布志市というところに行ってきました。
南洋、大洋州では水没する恐れのある国がたくさん存在します。有名な国としてはツヴァルがあげられますし、他にもマーシャル諸島共和国などなどあります。
水没の原因のひとつとして、温暖化による海面上昇と言われていますが、実際はそれひとつではありません。
南洋の島嶼国独特の立地が不利に働く
島嶼国は「狭小性」「遠隔性」「隔絶性」「依存性」というもののなかに存在しているため、どうしても土地自体に非常事態があっても迅速に対応することはできません。そもそもこのようになってしまったのも伝統的な社会システムが崩れてきたことにあると言われています。例えば昔なら食器などは使わず、バナナの葉っぱがそれになり、食材は手づかみ・・・よって「ゴミ」という単語も存在しないのが南洋であり、彼らには捨てた物=自然に還るものという考えがあります。
さらに近年都市化の影響もあって、生活排水の垂れ流し、管理されていないゴミや廃棄物がビーチを始めあちこちに捨てられ、その結果島を取り囲むサンゴ礁は死滅しちょっとした高波でも土地が削られていくという状態をもたらしております。
このように温暖化というグローバルな問題がある他に、ゴミ廃棄物といったローカルな問題もあり、それらが絡み合って水没という方向に国を向かわせていると言われています。
J-PRISMと志布志モデルが南洋を救う
そこで執り行われているのが「大洋州地域廃棄物管理改善支援プロジェクト」通称J-PRISMというものです。これは日本のODAやJICAの協力のもとおこなわれているプロジェクトであります。
このプロジェクトでは「三つのR+Return」を念頭においた活動をおこなっています。「三つのR」自体は国内でも最近浸透しつつありますが、それにリターンを付け加えたものになります。つまりリターン、還すというものでそれは自然に還るものは自然に、原産国に帰るものは原産国に還すというものであります。その還すために必要な行為が「ゴミの徹底分別」であります。
そこでJ-PRISMではゴミの徹底分別を南洋の島嶼国に教えるべく、日本でゴミの再資源化率一番の行政、志布志市のやり方を取り入れました。
志布志市はゴミの焼却施設がなくすべて埋め立てていました。しかしこのまま埋め続けるとパンクするというところまで陥りました。そこで平成12年よりゴミの徹底分別を始めました。
それは厳格なルールのもと現在では27品目まで分けているそうです。結果埋め立てなければいけないゴミは一つのみで残り26品目はすべてリサイクル業者が引き取っていくそうです。
今回志布志市を視察してもっとも驚いたのがトレイやペットボトルはただ捨てるのではなく、洗って汚れを取り、その後乾燥させてからでないとゴミとして出せないというところです。ただでさえ分別の品目数が多いなか、さらに一手間を一般市民にかけさせるというのは行政としても相当勇気いったのではないでしょうか?しかし自治会には市の職員が1人は入っているので、その人を中心にしてその自治会内で粘り強い説得を続け、ここまでできるよう至ったそうです。
ボランティアによるゴミの回収
ところでみなさんは自分が住む街を散歩して、その時善意で集めてしまったゴミの処分をどうしていますか?もちろん他の町会や街のゴミが混入されていたら、自分のゴミ集積所に捨てることは出来ません。「よそのゴミをなぜここに持って来るの?」という声もあがるでしょう。
それに対して私の住む目黒区では「散歩をする日にちと時間を予め教えていただければ区がそのゴミを回収します」との返答があった。
しかし私は「えーーーっ」だ。なぜなら散歩なんて言うのはその日の気分によってやるもので、時間まで決めることはできない。私はここにお役所体質、面倒なことはやらないというのを実感しました。
一方志布志市では、「マイロードクリーン作戦と言って、散歩コースを登録してもらい、帰宅後ボランティアで集めたというのをゴミ袋に明記してくれれば、各自治体のゴミステーションに捨てることができ、行政も持って行きます」だった。この違いには驚きました。
分別しても持って行きようがない?それが今後の課題
さて現在J-PRISMもフェーズ1が終わって、次の段階に進むそうです。南洋の場合、日本や志布志のようにいくら教えても中々現地人の気質で中途半端になったり、あるいは地理的な状況によって分別しても引き取り手がないというのがあるそうです。これをどう改善させていくかがフェーズ2での課題でしょう。
ちなみに志布志市はゴミの再資源化率は約77%あって、1人当たりにかかる年間のゴミ処理費用は約8,900円になるそうです。
私の住む目黒区の再資源化率は約32%で、処理費用は15,000円であり、これは日本の平均的な値でもあります。
生ゴミはすべて堆肥にします。これはフィジーなどにも教えています。
中間処理施設ではポットボトルやプラスチックなど再利用できるものが運ばれてきます。もちろん一般家庭に洗浄〜乾燥の一手間をかけさせているので、ここではそのようなことをするこはありません。よって汚水も大量に出ることはありません。
金属類も色々な種類があります。それを分別するのにはある程度の経験が必要とのことです。
ゴミは各自治体(衛生自治体)にあるゴミステーションに持ち込まれます。ここで細かく分別され、決められた日にトラックなどで運ばれていきます。
最後に志布志市役所市民環境科の畑山様、西川様には御礼申し上げます。